月経にともなう痛みや、月経前の心身の不調は、多くの働く女性が経験する身近な健康課題です。一方で、職場では話題にしにくく、「我慢するもの」として一人で抱え込まれがちです。
経済産業省の試算では、月経随伴症状による経済損失は年間約0.6兆円とされており、本人の健康だけでなく、企業の生産性にも関わるテーマです。この記事では、人事・労務担当者や管理職の方に向けて、月経・PMSの基礎知識と、企業ができる配慮について産業医の立場から解説します。
この記事のポイント
- 月経痛(月経困難症)やPMSは治療で軽くなることが多く、早めの婦人科受診が大切です
- 生理休暇は労働基準法で定められた制度で、請求があれば就業させてはいけません
- 制度だけでなく、相談しやすい雰囲気とプライバシーへの配慮が利用のカギになります
月経にともなう主な不調
月経困難症(つらい月経痛)
月経期間中に、下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気などが強く出て、日常生活や仕事に支障が出る状態を月経困難症といいます。はっきりした病気がない「機能性月経困難症」のほか、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気が原因となる「器質性月経困難症」もあります。
「毎月寝込むほど痛い」「鎮痛薬が効かなくなってきた」「年々痛みが強くなる」といった場合には、背景に病気が隠れていることもあるため、婦人科での診察が勧められます。
PMS(月経前症候群)とPMDD
PMS(月経前症候群)は、月経の3〜10日ほど前から始まり、月経が来ると軽くなる心身の不調です。イライラ、気分の落ち込み、集中力の低下、眠気、頭痛、むくみ、乳房の張りなど、症状は人によってさまざまです。
精神的な症状が特に強く、対人関係や仕事に大きく影響する場合はPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれることもあります。メンタル不調と区別がつきにくいこともあり、産業医面談では「症状に月経周期との関係があるか」も確認するポイントになります。
過多月経と貧血
月経の出血量が多い「過多月経」は、鉄欠乏性貧血の原因になります。疲れやすさ、息切れ、集中力の低下などが続く場合は、健康診断の貧血の結果もあわせて確認することが大切です。
治療で軽くなることも多い
月経痛やPMSは「体質だから仕方ない」と思われがちですが、鎮痛薬の適切な使い方のほか、低用量ホルモン製剤(LEP・OCなど)や漢方薬など、症状に応じた治療の選択肢があります。治療によって仕事への影響が大きく減ることも少なくありません。
企業としては、「受診してよい」「治療を受けながら働いてよい」というメッセージを伝え、婦人科を受診しやすい環境を整えることが、最も効果的な支援の一つです。
生理休暇は法律で定められた制度です
労働基準法第68条では、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないと定められています。休暇中の賃金を有給にするか無給にするかは就業規則などで定めますが、請求された休暇を認めないことはできません。
一方で、「男性上司に言いにくい」「名称に抵抗がある」などの理由で、実際にはほとんど使われていない職場も多くあります。名称を「健康休暇」「ウェルネス休暇」などに変えて、月経以外の体調不良にも使える制度にしている企業もあります。
企業ができる職場での配慮
- 体調不良時に休憩できるスペースの確保
- トイレに行きやすい業務体制(長時間持ち場を離れられない業務への配慮)
- フレックスタイムやテレワーク、時間単位の年次有給休暇など、柔軟な働き方の選択肢
- 制服や空調など、体を冷やしにくい職場環境
- 婦人科受診のための休暇・時間の取りやすさ
大切なのは、特定の人だけを特別扱いするのではなく、「体調に波があっても働き続けられる仕組み」を全員に用意することです。そうすることで、本人が症状を詳しく説明しなくても制度を使いやすくなります。
相談体制とプライバシーへの配慮
月経に関する症状は、非常にプライベートな情報です。管理職が詳しく聞き出したり、本人の同意なく周囲に共有したりすることは避けなければなりません。管理職には、次のような対応を研修などで伝えておくと安心です。
- 「体調がつらいときは遠慮なく言ってください」と、日頃から伝えておく
- 症状の詳細は聞かず、「業務上どのような配慮があれば働きやすいか」を確認する
- 本人の同意なく、ほかの社員に伝えない
- 必要に応じて、産業医や保健師など専門職の相談窓口を案内する
産業医は守秘義務を負った立場で、医学的な情報を聞き取ったうえで、企業には「必要な配慮」だけを伝えることができます。本人が上司に直接言いにくい場合の相談先として、産業医面談を活用していただくことも有効です。
法改正で「女性の健康」への取り組みが重視されています
2026年4月に施行された改正女性活躍推進法では、女性の活躍推進は女性の健康上の特性に留意して行われるべきことが基本原則に明記され、一般事業主行動計画に職場における女性の健康支援の取り組みを盛り込むことが促されています。
また、一般健康診断の問診に、月経困難症や更年期症状など女性の健康に関する項目を加えることも国の検討会で提言されています。月経・PMSへの配慮は、これからの企業の健康管理の基本的なテーマになっていくと考えられます。
アステラ産業医事務所にご相談ください
アステラ産業医事務所では、月経・PMSをはじめとする女性の健康課題について、産業医の立場から企業の体制づくりと従業員への健康支援を行っています。女性の健康やプレコンセプションケアに関する研修、衛生委員会でのミニ講話、個別の産業医面談にも対応しています。
東京・新宿を拠点に、オンライン面談を活用して全国の企業様をサポートしています。英語での面談にも対応可能です。

