労働安全衛生法にもとづく一般健康診断(定期健康診断)の項目の見直しが進んでいます。厚生労働省の検討会では、問診に月経困難症、月経前症候群(PMS)、更年期障害など、女性特有の健康課題に関する項目を加えることが提言されました。
この記事では、人事・労務担当者の方に向けて、この見直しの目的と、企業として押さえておきたいポイントを解説します。
この記事のポイント
- 女性の健康に関する問診は、本人が健康課題に気づき、受診や職場での配慮につなげることが目的です
- 回答は任意とされ、回答内容は健診機関から事業者へ直接提供されない方向です
- 施行時期は今後の省令改正で決まる予定です。今のうちに相談体制を整えておくと安心です
見直しの背景
働く女性が増え、年齢層も広がるなかで、月経にともなう不調や更年期症状が、仕事のパフォーマンスや離職に影響していることが注目されるようになりました。経済産業省の試算では、月経随伴症状や更年期症状などの女性特有の健康課題による経済損失は、年間約3.4兆円にのぼるとされています。
一方で、これらの症状は「我慢するもの」と考えられやすく、医療機関の受診につながっていないケースが多いことも課題とされてきました。健康診断の機会を活用して、本人が自分の状態に気づくきっかけを作ろうというのが今回の見直しのねらいです。
検討会で示された主な見直し内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 女性の健康に関する問診 | 月経困難症、PMS、更年期障害などに関する質問を追加 |
| 血清クレアチニン検査 | 腎機能の評価のために追加(40歳未満は医師の判断で省略可能) |
| 喀痰検査 | 廃止 |
このうち、女性の健康に関する問診は「一次スクリーニングや病気の確定診断を目的とするものではない」と位置づけられています。
情報の取扱いが重要なポイント
月経や更年期の症状は、非常にプライベートな情報です。そのため、検討会の報告では次のような取扱いが示されています。
- 問診への回答は受診者の任意とする
- 回答内容は、健診機関から事業者へ直接提供しない
- 問診の結果を理由とした就業上の措置を目的としない
つまり、企業が従業員一人ひとりの月経や更年期の状態を把握するための制度ではありません。本人が自分の不調に気づいたときに、相談できる窓口や使える制度が職場にあるかが、制度を生かせるかどうかの分かれ目になります。
施行時期
本記事の執筆時点では、具体的な施行時期は決まっておらず、今後、労働政策審議会での議論を経て省令改正が行われる見通しです。健診機関との契約内容や問診票の変更が必要になるため、最新情報を確認しながら準備を進めることをおすすめします。
企業が今から準備できること
1. 相談窓口を明確にする
問診をきっかけに「自分の症状は受診したほうがよいのだろうか」と感じた従業員が、気軽に相談できる窓口を用意しておきましょう。産業医や保健師による健康相談は、上司に話しにくい内容でも相談しやすい選択肢になります。
2. 使える制度を整理して周知する
- 生理休暇(労働基準法第68条)
- 時間単位の年次有給休暇、フレックスタイム、テレワーク
- 通院のための休暇や勤務時間の調整
- 健康保険組合などが実施する婦人科健診・相談サービス
3. 管理職・人事担当者の理解を深める
制度があっても、職場の理解がなければ使われません。女性の健康課題に関する基礎知識や、相談を受けたときの対応を学ぶ研修は、問診の導入に先立って取り組める対策です。
4. 健診機関と情報の流れを確認する
現在の健診結果がどのような形で会社に届いているか、個人情報の管理ルールはどうなっているかを、改めて確認しておきましょう。健康情報の取扱規程を見直すよい機会にもなります。
産業医の役割
産業医は、健康診断結果にもとづく就業判定や事後措置に加えて、従業員からの健康相談、衛生委員会での助言、健康教育などを通じて、女性の健康支援にも関わることができます。問診の導入をきっかけに、職場の健康支援の仕組みを見直してみてはいかがでしょうか。
健康診断の結果の活用や事後措置の流れについては、「健康診断の基本と対応フロー」もあわせてご覧ください。
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アステラ産業医事務所では、健康診断の事後措置や女性の健康支援について、産業医の立場から企業の体制づくりと従業員への健康支援を行っています。女性の健康やプレコンセプションケアに関する研修、衛生委員会でのミニ講話、個別の産業医面談にも対応しています。
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