執筆:諏訪内亜由子(アステラ産業医事務所 代表産業医)
近年、メンタルヘルスの重要性が高まる中、「ストレスチェック制度」は企業にとって欠かせない取り組みとなっています。しかし、「具体的に何をするのか?」「法律で決まっているのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ストレスチェックとは何か、その実施の意義、労働安全衛生法上の企業の義務について、産業医の関与も含めて解説します。
ストレスチェックとは?
労働者のメンタルヘルスを評価する制度
ストレスチェック制度とは、労働者自身が職場でのストレス状況を把握し、必要に応じて専門的な支援につなげることを目的とした制度です。2015年の労働安全衛生法改正により、常時50人以上の事業場に対し、年1回の実施が義務化されました。
具体的な実施内容
- 厚生労働省が推奨する57項目の調査票を用いた質問
- 実施者は医師・保健師、または所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師等。産業カウンセラーの資格だけでは実施者になれません
- 高ストレス者のうち実施者が面接指導を必要と認めた労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施
- 個人結果は本人にのみ通知。会社には本人同意なく開示不可
企業に求められる義務と流れ
ストレスチェック実施の法的根拠
労働安全衛生法第66条の10により、ストレスチェックの実施が明記されています。対象となるのは「常時50人以上の労働者を使用する事業場」です。違反があれば、行政指導や勧告の対象となる可能性もあります。
企業が担うべきステップ
- 実施体制の整備(実施者の選任、実施規程の作成)
- 調査票の配布と回収
- 結果の通知と高ストレス者の抽出
- 産業医による面接指導
- 集団分析と職場環境の改善
これらは、単なる「調査」で終わらせず、職場環境改善につなげることで初めて意味を持ちます。
なぜ企業にとって重要なのか?
メンタル不調の早期発見と対策
ストレスチェックは、ストレスへの気づきと職場環境改善によるメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)を主な目的とする制度です。精神疾患の診断や、疾患の有無を判定する検査ではありません。とくに長時間労働や人間関係のストレスが蓄積されやすい現代において、制度の活用は企業のリスク管理に直結します。
職場の安全配慮義務を果たす一環
企業の義務として、従業員の健康を守る「安全配慮義務」があります。ストレスチェックは、その具体的な実践方法の一つです。加えて、結果を活用した環境改善を進めることで、職場全体の活性化にもつながります。
産業医の重要な役割
高ストレス者への面接指導
産業医は、ストレスチェックの結果をもとに、高ストレス者との面談を行います。面談の中で就業上の配慮が必要と判断された場合には、企業に対して具体的な措置を提案します。
集団分析と職場改善への助言
また、産業医は集団ごとのストレス傾向を分析し、組織的な問題点を抽出します。そのうえで、改善案を提示し、経営層や衛生委員会と連携して職場改善に貢献します。
よくある誤解と注意点
「義務ではない」と誤解していませんか?
2026年10月現在、50人未満の事業場では実施は努力義務です。改正法の施行により、2028年4月1日から50人未満の事業場にも義務化されます。実施体制や個人情報の取扱いを早めに準備しましょう。また、ストレスチェックを実施していても、高ストレス者への面談を適切に行わないと、制度の目的を果たせません。
プライバシーへの配慮が重要
ストレスチェックの結果は個人情報です。本人の同意なしに会社が結果を見ることはできません。この点を誤ると、労務トラブルの火種となるため十分な配慮が必要です。
まとめ
ストレスチェック制度は、企業のメンタルヘルス対策の中核となる制度です。労働安全衛生法に則り、産業医と連携して適切に運用することで、従業員の健康を守り、組織の健全な成長につながります。
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関連情報・出典
管理職の対応はメンタルヘルス研修、休業後の支援は職場復帰支援の流れもご覧ください。
出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」、制度関係Q&A。制度情報確認日:2026年10月13日。

