産業医の料金を比較するとき、月額の安さだけでは、自社に合う契約かどうか判断できません。同じ「月1回訪問」でも、訪問時間、面談の上限、健診結果の確認、記録作成、臨時相談の扱いによって、実際に受けられる支援は変わります。この記事では、価格表を見る前に整理したい条件と、見積書の読み方を紹介します。特定の相場や当事務所の未公表料金を示すものではありません。
見積もりの前に、自社が必要とする業務を整理する
最初に確認するのは、事業場ごとの労働者数、所在地、業種、作業内容、勤務体制です。産業医の選任は常時50人以上の事業場で必要ですが、規模や有害業務によって専属産業医などの要件が変わります。複数拠点がある場合は、会社全体で一つの契約を結ぶことと、各事業場で選任要件を満たすことを分けて考えましょう。
次に、過去1年の面談件数、健診の人数と時期、衛生委員会の開催日、職場巡視の対象を確認します。担当者が「相談があるたびに依頼する」だけでは件数を見積もりにくいため、定例業務と臨時業務に分けると整理しやすくなります。新規選任で実績がない場合は、想定件数であることを明示して相談してください。
月額料金に含まれる範囲を、具体的な言葉で聞く
「産業医業務一式」という表記だけでは、契約後に認識の違いが生じます。職場巡視、衛生委員会、健診後の意見聴取、長時間労働者への面接指導、メンタルヘルス面談、復職支援について、それぞれ含まれるかを確認しましょう。面談を実施するだけでなく、会社が対応するための意見書や再面談の調整も重要です。
例えば、訪問枠が60分の場合、その中に移動、巡視、委員会、面談がどのように組み込まれるかを聞きます。時間内でできる業務の優先順位と、収まらない場合の追加枠を事前に決めれば、忙しい月にも必要な支援を確保しやすくなります。60分はあくまで比較のための例であり、法定の標準時間ではありません。
追加費用が生じる場面を確認する
見積書では、訪問時間の延長、臨時面談、健診結果の大量確認、主治医との情報交換、研修、出張、交通費、キャンセル料、契約開始時の体制整備などを確認します。税込・税別、請求単位、最低契約期間、更新・解約条件も同じ表に記載すると比較が容易です。含まれていない項目は、不要と判断する前に必要性を検討しましょう。
年間費用は「月額×12」だけでなく、想定される追加面談、健診時期の追加作業、交通費等を加えて考えます。比較する各社に同じ条件を提示し、通常月と繁忙月の二つの見積例を求める方法が実用的です。最も相談が少ない月だけを前提にすると、実際の支出との差が大きくなることがあります。
訪問とオンラインの役割を分けて考える
オンライン面談は、遠方の従業員や日程調整が難しい場合に役立つ選択肢ですが、すべての産業医業務を自動的に置き換えられるわけではありません。実際の作業場を確認する巡視と、個人への面接指導では目的が異なります。健康状態や面談環境、制度上の要件を踏まえ、担当医と実施方法を決める必要があります。
産業医の巡視は原則毎月1回以上で、所定の情報提供と事業者の同意などの条件を満たす場合は2か月に1回以上にできます。「訪問が少ない契約だから問題ない」と考えず、必要な条件を誰が整え、どの記録で確認するかを明確にしましょう。巡視頻度を減らした場合も、毎月の情報提供や相談対応まで不要になるわけではありません。
安定して相談できる体制も比較対象にする
費用以外では、担当医の継続性、自社の業種への理解、面談枠の取りやすさ、休暇時の代替体制、人事への説明のわかりやすさを確認します。会社にとっては、健康情報を安全に共有し、医師の意見を実行可能な業務調整へつなげられることが大切です。資格や経歴の長さだけでなく、運用の相性も見てください。
質問の例は「健診結果が一度に届いた場合、いつまでに確認できますか」「復職面談の追加依頼はどの窓口に連絡しますか」「担当交代時には何を引き継ぎますか」です。具体的な場面で回答してもらうと、サービス名だけでは見えない違いがわかります。緊急対応を依頼する場合も、対応可能な時間帯や限界を確認します。
社内の事務負担も含めて契約を評価する
面談予約、対象者への案内、資料収集、記録保存、医師の意見を受けた措置の管理には、社内の時間も必要です。外部委託でどこまで支援され、どこから人事総務が担当するのかを整理しましょう。安価でも調整に大きな負担がかかる契約と、事務支援を含む契約では、総費用の見え方が変わります。
ただし、業務を委託しても事業者としての健康管理上の責任がなくなるわけではありません。産業医に必要な権限や情報を提供し、意見を踏まえて措置を検討・実行する体制が必要です。社内の決裁者と担当者を決め、契約開始後に「助言は受けたが誰も動けない」という状態を防ぎましょう。
見積依頼メールに入れる情報
見積依頼では、事業場の人数と住所、業種、希望開始月、訪問の希望、必要な面談や健診対応、現在困っていることをまとめます。個人名や診断名などは、初回の料金相談には通常必要ありません。具体的な事例資料は、契約や情報管理方法を確認してから、安全な方法で共有してください。
選任に伴う手続きは産業医選任の実務チェックリストで整理しています。アステラ産業医事務所のサービス内容をご確認のうえ、希望する支援を添えて料金・契約のご相談をお寄せください。
参考にした公式情報
法令・公式情報の確認日:2026年10月11日。厚生労働省「産業医について教えて下さい」、厚生労働省「産業医制度に係る見直し」。料金の比較方法は、これらの法定業務を踏まえた実務上の提案です。

